路地裏の少年

昭和という時代に東京の端っこの町で子供時代を過ごしけど、あの頃の路地裏には夢があったよね。まあパソコンも携帯も何にもなかったけど、薄暗い路地裏に入っていくのは何か未知の世界に入っていく、そんな怖いけれど見てみたいという子供らしい好奇心で、おっかなびっくり湿っぽい路地に入っていくのだけど、そこにはお化けも妖怪もいなかったけど楽しかったな。さび付いた三輪車や壊れた家具なんかが雑然と捨てられていたな。大人の目から見たらそれはただのゴミでしかないのだけれども、子供のころは何を見ても刺激的だった。親に言えない秘密基地を一つ持つごとに少年の衣を脱ぎ捨てて大人の階段を昇ってきたのだと思うけど、美しいものだけに感動していたわけではなく、大人の目から見たらただのゴミでさえない景色の中に心を躍らせていたよね。あの少年の感性をぼくはどこに捨ててきてしまっただろう?